日本で実験してみましたコーナーNo.2:播種と同時にYara化成肥料を表面施肥しても濃度障害を起こさずに生育するか?

私は栽培現場にて様々な肥料で追肥をお願いする機会が多いのですが、追肥の効果って施肥後の降雨の量、水はけの良否等の場合によって違う気がしております。
肥料は水に溶けないと効かないので「まずは少ない水にでも溶けて、根のある部分全体に薄目の肥料濃度で運べるような肥料があるといいなあ~」と思っておりました。となると まずは圃場状態においても水に溶けやすい肥料という事になります。

Yara社の化成肥料と出会って上記に示した私の欲しかった性能を持った肥料ではないか?と思っていたのですが、本当に普通の化成肥料と大きな差があるのか?という点は疑問として残りました。その疑問を確かめるために一般的にはやらないような非常に極端な方法で性能試験をしてみましたのでその結果を報告したいと思います。

試験名は「播種と同時に化成肥料を表面施肥しても濃度障害を起こさずにちゃんと生育するか?」です。(普通にはいかにも濃度障害が出そうな試験です。)
試験方法は・・・
直径12㎝のポットに容積比で無肥料培土3:軽石1を混合した培土を充填、その後ポット表面にYara217、YaraN555、14-14-14をN=15㎏/10aの割合になるように施肥して、その後通常の播種前潅水(鉢底から水が少し出てくる程度の潅水)を行った後に、通常の方法で小松菜の種子を1.5㎝ぐらいの深さに播種して覆土し25℃の発芽室にて発芽させた後、通常管理しながら生育状況を確認する方法にて試験を行いました。(対照区としては無施肥区を設定。1区2連)水はけ良好な環境下での試験になります。
①YaraN555 1.13g/鉢(100g/㎡)
②Yara 217  1.41g/鉢(125g/㎡)
③14-14-14  1.21g/鉢(107g/㎡)
④ 無施肥

施肥、播種共に2022年2月15日 午前中に実施しました。

下の写真は播種前の肥料施肥後の状態です。
10aの圃場に100~125㎏の肥料を施要するとこんな感じです。
確かに217は多く施肥されている感じがしますね・・・



播種後の状況は、発芽は25℃発芽室に2日間にて発芽揃いとなり順調でした。
発芽については肥料の濃度ストレスのない無施肥区が最も早い発芽となり、他の3区は遅れた感じになりました。発芽揃い後は発芽室から出して夜温が15℃程度になるよう調整したトンネル内に入れて生育させました。

播種6日目の状況です。



一般的に双葉の大きさで肥料が効いているか否かを判断しますが、写真を見て頂ければ分かるように「Yara217」「YaraN555」の双葉は明らかに大きくなっており(特にYaraN555)初期潅水にて肥料が早く溶けて水と共に鉢内に肥料成分が移動した事で濃度障害のない状態での生育になっているようでした。
14-14-14については明らかに双葉の大きさが小さく濃度障害を受けているような状況になっており潅水における肥料の溶解が遅く、根元の近くの肥料成分が多くなってストレスを受けているような感じになっているようでした。
写真を見てもYara製品は「水に溶けやすい」点についてはやはり普通の化成肥料よりアドバンテージがあるものと感じました。
ただ、今後は溶けやすい分だけ肥効の持続性に差が出る(肥料の流亡が原因)可能性があるので推移を見守りました。

播種後13日後の状況です。



Yara化成と14-14-14の生育差はさらに大きくなり無施肥区との比較からも明らかな肥効が確認出来ました。14-14-14区は初期の濃度障害の影響で双葉が委縮し生育が進んでおらず双葉の肥大がしないような状況になりました。
潅水については3日に1回ペースにて実施しておりますがYara化成については双葉の黄化もなく順調な生育になっておりました。

播種後20日後の状況です。



Yara化成区の本葉が抽出したので一目瞭然の生育差となりました。
双葉の黄化もなく肥料切れの状況も確認されませんでした。良く効く肥料です!
14-14-14は初期の濃度障害の影響にて結局生育せずに枯死株が出ました。
やはり初期生育は重要ですので濃度障害が出にくいような施肥体系にて定植、播種の準備をしないといけない事を再確認しました。
無肥料区は枯れる事はないが、生育が進む事もないような生育状況になっておりました。

播種後27日後の状況です。



状況は変わらずYara化成区の生育が進み、その他の区の状況は変わらない感じでした。相変わらず双葉の黄化は見られず肥効的には充分に維持出来ている印象でした。生育が進んだので だいぶ小松菜らしくなってきました。

播種後35日後の状況です。



すっかりYara化成区の生育が進み、この鉢の大きさではこれ以上大きくならないような生育になりました。前回調査時に各区の根の状態を検証すべく液肥を潅水代わりに施肥してみたところ14-14-14、無施肥区の株も肥料に反応して少しですが葉色が濃くなり生育が進んだ感じになりました。14-14-14は初期生育の濃度障害の影響が大きく(発根が阻害された。)、無施肥区は肥料欠乏による生育停滞が生育不良の原因ですが吸収しやすい液肥を散布したことにより反応はしている事から根は少ないながらも残っている事が分かりました。
Yara化成については液肥の肥効もあいまって葉がさらに大きくなりました。相変わらず双葉の黄化はしてないので肥効的には問題はない判断で潅水を重ねても さほど肥料が流亡しなかったように思いました。(両区共に絞り丈20~21㎝、葉色(SPAD)は40ポイント程度でした。両肥料を比較すると若干217の葉が厚い印象でしたが大差ない生育です。)

少々特殊な試験でしたので参考になるかは分かりませんが試験をした本人が驚くほど生育状況に差が出ました。肥料の特性を理解して上手く使用すれば良い肥効が得られるものと思いました。今後も特長のあるYara化成を上手く使って頂くにはどうすれば良いのかについて考えながら種々アドバイスをして行きたいと思います。

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