ニュージーランドの生産者視察の〆として、大麦収量ギネス記録を持つウォーレン・ダーリング夫妻を囲んで晩餐を開くことができました。初夏の陽光が差し込むティマル市内のレストランでビール・ワインを片手に会話をしたときの雑感と今回の視察を通じて感じたことを記します。
1.生産者と我々のような農業資材提供者との距離が非常に近く、お互いにWin-Winの関係を築いている。
2.1戸あたりの圃場面積は大きいが家族単位での営農が多く、ファミリービジネスとして次代に農業を継承している。
3.総圃場面積もさることながら一つ一つの圃場区画が大きく飛び地での保有が少ない。その為大型農機(トラクター、ハーベスタ―等)、灌水機(スプレイヤー)を効率よく使用できる為、労働力不足・担い手不足といった問題は聴取した限りではあまりない。
4.所有している農機は大型で価格も高いと思われるが、保有台数は少なく圃場面積当たりの設備資材コストは日本よりも相当少ないと感じられる。
5.ニュージーランドが国策として農業を主要産業と位置付け、その中でも酪農を戦略的に一番に位置付けている。今回視察した農家で栽培されている小麦・大麦は飼料用であり、食用としての小麦・大麦の栽培は25%のみであるとのことであった。食用の殆どは隣国であるオーストラリアからの輸入に頼り、酪農を主体にグローバル競争に打ち勝とうとしている様に思われる。
6.酪農では広大な牧草地に放し飼いで飼われていることが多く、酪農業から出るし尿は牧草地にそのまま自然循環され堆肥等への転用は殆どない。搾乳中に出るし尿ですら、牧草地に作った幾つかの沈殿池に貯められている。沈殿汚泥は草地化され、沈殿池の上澄みの水も濾過された後スプリンクラーを通じて牧草地に散布されている。
7.1984年に政権に就いたデビッド・ロンギ労働党政権下で民営化、規制撤廃を進める過程で補助金・優遇制度を減らしており、生産者の独立性・経営志向が強い。
ニュージーランドの生産者からは昼の圃場では技術論を教えて頂きましたが、酒が入った夜の会食の席では農業が生命の根幹となる食を支えており、そのプライドさえあれば地球の何処であろうがそれ自体に価値があり尊いことだと農業人としての気概を教えて頂きました。
ニュージーランドの農業は日本にとって参考になる点が多々ありました。一方で国の中での産業としての農業の立ち位置、環境・気候・風土も異なっている中、それぞれで最適化して進化と深化を重ねていけば良いものと思いました。Yaraはスローガンとして”Knowlege grows 知識は育つ”を掲げていますが、まだ日本で紹介出来ていない知識・技術が相当にあると感じました。日本の農業に合う合わないは別として農業資材提供者の使命として持っている情報はオープンにし、それを採用して頂ける生産者様には少しでもお役に立てる様微力ながら努力させて頂きたいと思います。
YaraNZの ポール・ジョンストンさんの親友酪農家のハービーさん
大麦収量ギネス農家ウォーレン・ダーリング夫妻を囲んでティマル市内で最後の晩餐
クライストチャーチ市内で毎土曜日の朝に開かれているマルシェの様子
最後に今回ニュージーランド視察にご参加頂いた生産者、関係者の皆さま、またニュージーランド滞在中に現地でいろいろとアレンジをして頂いたYaraNZのポール・ジョンストンさん、収穫時の繁忙期の中で快く圃場を案内頂き、最高のホスピタリティで異国からの訪問者を迎えてくれたニュージーランドの生産者の皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
GRWRS 三宅 耕司