窒素を理解しよう

もしあなたが現在の窒素事情に関して、少し混乱していると感じるとしてもそれは不思議な事ではありません。少し前までは人生も限られた選択肢しかなく大変シンプルでしたが、昨今では選択肢が増えて遥かに複雑になったのと同様に、それなりの理由があるからです。

それほど昔の事ではありませんが、窒素源の選択肢は、固体の硝安(AN)か液体の尿素硝安液肥(UAN)の2つが殆どでした。他の選択肢としては、尿素、硫安、硝酸カルシウム(CN)、硝酸カルシウムアンモニウム(CAN)がありましたが、品質が安定しない、市場が限られている、比較的価格が高価である等の理由により選択肢から排除される事が多かったです。

現在では、品質の向上、供給の拡大、機械撒きでより遠くに(24m以上)に正確に施肥する必要性が生じてきた事から、これら排除されていた窒素源が選択肢に上がる様になって来ました。これに加えて、硫黄、精密な施肥、NPKSの選択肢が加わった事で、更に複雑な様相を呈して来ています。

ではどうやってこんがらがった窒素を紐解いていけば良いのでしょうか?

最初にして最大の要素は、あなたの優先事項は何かという事を考えることです。優先事項には、経済性、儲け、収量、リスク管理等が考えられると思います。儲けとかリスクの軽減の大部分は、継続的に収量を取り続ける事によってもたらされるものですが、それに加えて農機や労働力などの資産の使用も一つの要素として切り離して見ておくべきものでしょう。

収量確保の為に窒素は欠かせないものとして認識されていますが、その中でも硝酸カルシウム(CN)は、それが100%硝酸塩の形態であるという理由で窒素肥料の中でもリストのトップに来るものです。

硝酸塩は、その成分が植物の体に取り込み易い窒素体であるという事がキーポイントとなっています。硝酸カルシウムアンモニウム(CAN)、硝安(AN)、尿素硝安液肥(UAN)は植物に取り込まれにくく、継続的な収量、安定した収益というものを犠牲にしています。窒素における投下資本収益性(Return on Investment)という観点で見ると、硝酸塩は尿素よりも優れているという数多くの重要な統計結果の裏付けがあります。

正確性だとか効率を最優先事項とする場合は? もしそうであるなら、硝酸塩は最適である可能性があります。

もし正確性があなたにとって最重要項目であり、耕作地のトラムラインが24m、32m、36mといった場合は,Yaraの硝酸カルシウム(CN)、硝酸化成は正しい選択です。

もし、農機とか労働力とか大規模農地といった資産を最大限に生かす効率性を志向しており、トラムラインが48mといった場合、尿素硝安液肥(UAN)も好ましい選択肢となってきます。液体は大規模な農場で正確に施肥する場合に適しています。

リスクに対するあなたの関心は? もしリスクに対する許容度があるのなら尿素も1つの選択肢となり得ます。

もしリスクを許容する事が出来るのであれば、尿素由来の肥料も選択肢のひとつです。尿素は施肥後20%以上のアンモニア態窒素成分がすぐに流失します。これは硝安(AN)が3%程度のロスである事と比べても大きいものです。このロスは、直ちにリスクを生み出します。これは詰まるところ、アンモニア態窒素が作物の中であれ、土壌中であれ、大気中であれ、消失するという事です。環境に与える負荷は、多大であるのに対して、作物の生産性に寄与する事はなく、収量、品質とも下げる事につながります。

尿素分解酵素抑制剤は、このロスを減らす方法として紹介され、Yaraの独自調査によってもロスを減らす事に関しての効果は実証しました。しかし、ロスを減らすのと同時に、利用できない尿素を利用可能な硝酸態尿素に変換させる際に必要となるプロセスまでをも抑制するものであり、これは窒素変換サイクルにおけるもう一つのリスクとなります。これらの抑制材は、他の様々な選択肢との価格差を狭めるコスト増要因にもなります。抑制剤の付加によって収量増につながるという明確な傾向もなく、効果は散発的です。

窒素の二酸化炭素排出量はあなたにとって重要ですか?

もう一つ近年になって出てきている問題として、二酸化炭素排出量の問題があります。これはとりわけあなたがバリューチェーンの中にいて、この問題を考える場合に特に顕著となります。二酸化炭素排出量の問題を最優先に考えた場合、大変エネルギー効率が良いヨーロッパの製造設備で生産された窒素肥料を選択する動機となります。

二酸化炭素排出量には、いくつかの問題が指摘されており、窒素利用効率(NUE)の改善はYaraの目標にもなっております。良い窒素利用効率(NUE)は、複数の施肥体系でも利用可能となる窒素態とも連関しており、作物がそれを求めるのと同様にあなたもそれがどのように達成されるかを決める事が出来ます。

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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