カルシウムは収穫・包装・出荷などのハンドリング時のダメージを少なくし、保存期間をより長くするために最も重要な働きをする栄養素です。
カルシウムの大部分は葉・へた・株・根に蓄積されますが、果実に送りこまれる少量のカルシウムがイチゴの品質保持と貯蔵寿命の点で非常に重要な働きをします。
果実の内側および末梢部にはカルシウムはほとんど蓄積されませんが、果実の縁に蓄積される比較的高い濃度のカルシウムが果実の品質にとって特に重要となってきます。
イチゴの部位別の主要栄養素分布
縦軸:栄養素の分布割合(%)
横軸:N(窒素) P(リン酸) K(カリウム) Ca(カルシウム) Mg(マグネシウム)
Roots&Crown(根・株) Leaves&Petioles(葉・ヘタ) Flowers(花) Fruits(果実)
果実内の栄養素分布(単位:μg/g(乾燥重量)
K:カリウム Ca:カルシウム Mg:マグネシウム
イチゴの果実は打痕や収穫後の腐敗の影響を非常に受けやすく、カルシウムの含有量が低いと損傷部分が悪化し保存期間が短くなります。 カルシウムが果実の硬度を高め、品質を長く保つことが試験によって示されています。
カルシウム葉面散布量と硬度の関係
縦軸:果実の硬度(収穫後28日後の硬度)
横軸:カルシウムの葉面散布量(単位1ポンド/エーカー=約0.11kg/1反)
1反当たり約0.11kgのカルシウムを果実がピンク色になってから3日おきに葉面散布。
一番左の棒グラフ0はカルシウムの葉面散布なし、順に1回、2回、3回、4回葉面散布
カルシウム葉面散布とイチゴの硬度の関係
2012年ポーランドでのポット栽培での実験
左軸(対象区 カルシウム葉面散布なし)
右軸(試験区 カルシウム0.45g/l葉面散布)
しかし他の陽イオン分子の栄養素を犠牲にしてカルシウムを過剰に摂取すると、果実の堅さと有効期間が短くなる恐れがあります。 このためCa(カルシウム)の摂取をK(カリウム)やMg(マグネシウム)などの他の陽イオン分子の栄養素とバランスさせることが重要となります。
カルシウムは果物の収穫後のカビの量を減らすのにも役立ちます。 このカルシウムはまた葉面散布して収穫前に施用することもできます。カルシウムは白化を減らし、成熟中のアントシアニンレベルを上げて果実の色を維持する効果もあります。
収穫前のカルシウム施肥とカビ発生の関係
1991年カナダでの培土栽培での実験
縦軸:カビ発生レベル(0 発生なし 9 全面カビ化)
横軸:収穫後の経過日数
濃青 : 対象区(収穫前のカルシウム施肥なし)
薄青 : 試験区(カルシウムを1エーカー当たり3.2ポンド=1反当たり約350g施肥)
収穫前のカルシウム葉面散布と吸収量・品質の関係
2003年ポーランドでの培土栽培での実験
果実のカルシウム含有量 収穫時および5日後の果実の硬さ 白カビ発生の割合
収穫前のカルシウム葉面散布と白化の関係
2007年インドでの培土栽培での実験
対象区 カルシウム葉面散布
本記事は、Yara米国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。
Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~
Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。
また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。