小麦の葉と芽の数を増やす

葉と芽の数が、収穫時の穂粒のサイズと穂数を決定します。育った苗の総数と収穫まで生き残る数が最終的な穂数となります。初期芽、葉の生育、および苗条生存のための最も重要な多量養素は、窒素、リンおよび硫黄です。微量養素のうちマンガンと亜鉛が、葉と芽の数を増やすために最も重要です。

小麦の作物栄養と小麦の葉と芽の数との関連

窒素

窒素は、単体の栄養素としては高収量を得る為に最も重要な栄養素です。適切な供給により葉を大きくし、より多くの芽立ちを促し早く生育させます。 一方、窒素欠乏は発芽率を低下させ、小穂(穀粒部位)の数を減少させる事に繋がります。


芽の生存率と分けつ数には、窒素施肥の回数と施肥時期が相互に作用します。

芽数が理想値よりも低い場合には、登用期に窒素の施肥量を増やす事によって芽数が増えて、それにより最終的な穂数も増えます。

但し、窒素の多量施肥は葉や茎の徒長や倒伏を引き起こす可能性があるため、植栽の密度が目標通りである場合は行わない方が良いです。 芽数が目標値通りであれば、登用期の早い時期に窒素の施肥量を減らして下さい。
春撒き小麦の場合、葉と芽の成長の期間が非常に限られているため、窒素の早期供給と一定量の施肥が早期成長と芽数を確保するうえで重要です。

小麦に関しては、収量増に寄与する要因のすべてが窒素の施肥から観察出来ます。
収量に対する窒素の影響は、この窒素応答曲線から明らかに見られ、窒素の施肥量が作物収量をほぼ倍増させる事が分かります。一定量以上に窒素が施肥されると徒長と倒伏のために収量は頭打ちし最終的には低下します。最適窒素量(N opt)は、最大の収量が達成される施肥量の事です。

リン

リンは、植物成長と発達に及ぼす影響の点で窒素の次に2番目に重要な栄養素であると考えられています。作物が2〜3枚の葉をつけた後、葉と芽の数が継続的に増加するために土壌中の利用可能なリンを吸収し始めます。土壌中のリンの利用可能度は、pH、アルミニウム、鉄およびカルシウムなどの他の栄養素、土壌水分および温度を含む多くの要因によって影響されます。
新たに利用可能なリンを施肥することによってこの初期成長を逃さないようにする事が重要です。秋撒き小麦では、考慮すべき重要なタイミングが2つあります。最初のタイミングは、芽と根が急速に発達する起生期です。2回目のタイミングは、春の成長が始まった時です。3月から5月の間は、必要なリンの70%が吸収されるので、この期間を逃さずに施肥することが重要です。
春のリンの施肥によって収量が増加する事が実験で明らかになっています。
土壌中のリンの利用可能性が限られている場合には、作物内にリンを取り込ませるために、リンの葉面散布も施肥設計に含める事が出来ます。これにより秋と早春の生育を良くする事が可能となります。

硫黄

硫黄は、苗が継続的に成長するために植物が必要とする重要な栄養素です。植物の成長のための構成要素は硫黄ベースのアミノ酸であり、そこから多くの植物タンパク質が生成されます。硫黄は、植物が成長を始める時期に植物体内で転流しにくいです。これを克服するためには、需要のピーク時までに必要な硫黄分を取り込ませるために複数回に分けて連続供給を行うことが望ましいです。硫黄の葉面散布は、転流しにくい欠点を克服するための選択肢となります。

マンガンと亜鉛

マンガンと亜鉛は、穂数および増粒などの収量に影響を及ぼす2つの重要な微量養素であり、結果として最終的な収量にも影響を与えます。マンガンと亜鉛は、また主要栄養素と微量養素両方の吸収を助ける働きがあります。

小麦の収量に影響を及ぼす他の作物管理の実践

苗の数は、以下の影響を受けます。

  • 品種の選択/小麦の種類 – 品種によって分けつと生育の速度が異なります。
  • 播種日 – 早期播種では、分けつ数/プラントが増加します。
  • 播種量 – 播種量が多いほど、より多くの芽は出ますが一方で、分けつ数は少なくなります。
  • 土壌/播種条件 – 貧栄、過密な苗床は早期の分けつを遅らせます。
  • 有害生物防除。 ナメクジ等。
  • 土壌の栄養状態 – 肥沃な土壌(高い窒素状態)は、分けつ数を増加させます。

一般的に播種数を減らし、播種時期が早ければ早いほど、分けつが多くなり最終的な苗の数は穂を生み出すまで生き残った分けつの数に依存します。 分けつ数と生存率の関係は以下の通りです。

  • 秋と冬の天候(秋撒き小麦) – 寒いとは芽吹きと分けつの開始が遅くなります。
  • 窒素施肥 – 窒素施肥により、葉の大きさ、分けつ数、分けつの生存率が増加します。
 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

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Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

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