硝酸態窒素の子守唄

分かってくれとは言わないがそんなに俺が悪いのか?

何の話かと言うと硝酸態窒素の話です。このフレーズが分かる方は年代的にビンゴなので細かい話は省略しますが、硝酸態窒素は決して悪ガキでも不良でもない!?誤解されている部分も非常に多い!?と感じ、敢えてこの題目にしました。アバタもえくぼと開き直っている積りでもなく、真面目な話です。
硝酸態窒素というと流亡しやすい。土壌から河川湖沼に流出し富栄養化の原因になる。生活用水を地下水に頼っている地域では胃腸内の微生物による還元作用によって亜硝酸性窒素が生成されブルーベビー症の原因、発癌性があるといわれる物質を生成するリスクがある。など兎角ネガティブなイメージが付きまとっています。でも作物栄養の観点から見ると一般的に硝酸態窒素は作物に吸収されやすい形態の窒素であり、流亡しやすいという性質も裏を返せば土壌中に固着されにくい、作物には吸収されやすいということになります。窒素は土壌中で形態を変えて硝酸態窒素になります。尿素、アンモニア態窒素も最終的には硝酸態窒素に土壌中で変化していきます。

Yaraの施肥の考え方は4つのRight(適切な)に基づいています。
4つのRightとは
Right time(適切な時期に)、Right place(適切な場所に)、Right rate(適切な量を)、Right source(適切な素材で)を示しています。
Yaraの肥料の多くは硝酸カルシウム肥料にせよ、化成肥料にせよ、基本的に作物に即時に吸収されやすい硝酸態窒素(素材)がベースになっています。
硝酸態窒素は即時に吸収される(一方で流亡しやすい)素材であるが故に他の3つの要素(時期、場所、量)も重要であるという考え方です。過剰な硝酸態窒素は悪者かも知れませんが、適切な量の硝酸態窒素は作物の健全な生育に不可欠と考えています。
“作物にとって最大の栄養素である窒素を最大限活用してトータルの施肥量を抑える。”
その様な考え方の方には硝酸態窒素は良い相棒になると思います。

4R栄養管理

Yaraは4RNutrient Stewardship(4つの適切な栄養管理を推奨する団体)の協賛会員です。4R(4つの適切な)とは、適切な肥料源、適切な施肥量、適切な時期、適切な場所を意味し、4Rの枠組みを通じて適切な肥料使用を行うことを目指しています。

4R(4つの適切な)栄養管理とは何か?


4R Nutrient Stewardshipは、生産量の増加・生産者の収益性の向上・環境保護の強化・持続可能性の向上など、作付体系のゴール(究極目標)を達成するための枠組みを提供します。
これら目標を達成するために、4Rのコンセプトには以下の意図が含まれています。
•適切な肥料源
→作物の要求にあった肥料のタイプを選択する

•適切な施肥量
→作物が成長に必要とする量の肥料を与える

•適切な時期
→作物が必要としている時期に肥料を作物に吸収できる様にする

•適切な場所
→作物が栄養素を利用できる様に肥料を配置する

適切に管理された施肥体系は、経済的・社会的・環境的利益をもたらします。 その反対に管理が不十分な施肥体系は、収益性の低下・肥料ロスの増大・水や大気など環境に負担を掛けてしまうリスクがあります。
4R栄養管理には肥料の使用効率を最適化するベストマネジメントプラクティス(BMP)の実行が必要です。 肥料BMPの目標は養分供給を作物の要求と一致させ、圃場からの養分流失を最小限に抑えることです。 BMPの選択は圃場によって異なり、圃場がある地域の土壌や気候条件・作物管理条件およびその圃場特有の要因によって異なります。

4R NutrientStewardshipの詳細、協賛企業

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三宅耕司(明京商事株式会社)

GRWRSを監修。主にYara社海外法人の記事の翻訳を担当。
Yara社が掲げる“生産者中心 Farmers-Centric”の理念をGRWRSの記事の中にも反映・実践できる様にしたいと思っております。
農法・使用する農業資材はライフスタイル、価値感が人それぞれで違っているのと同じ様に生産者によって個性があっていいと思うし、そうあるべきとも思いますが、どの農法にでも通底するようなエッセンス・根拠は必ずある筈と思ってGRWRSの記事製作を行っています。
野球選手の評価がセイバーメトリクスという新しい指標によって変わった様に肥料の世界においても新しい視点・評価の在り方が普及・発展し、生産者にとって最適な資材が意図をもって選択され、使用されることを願っております。
そのためにも肥料のサプライヤーの立場から情報が偏らないように、非対称とならないような情報発信を心掛けていきたいと思っております。

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